お知らせ

その他 国際交流セミナー「青年海外協力隊における助産支援活動 in Ghana」を開催しました。

對馬 朱香さん

 
 令和2年11月27日、国際交流セミナー「青年海外協力隊における助産支援活動 in Ghana」を開催しました。青年海外協力隊(※)の一員としてガーナで助産支援活動を行った経験をお持ちの助産師 對馬 朱香さんを講師にお招きして、青年海外協力隊に参加を決めたきっかけやガーナでの助産師としての活動、現地の方々や生活の魅力等についてお話いただきました。
 当日は本学の学生や教職員・医療関係者が参加し、講演会終了後、「今まで触れてこなかった領域のことを教えていただき、興味が出た」「ガーナの文化や生活について知ることができた」といった感想が寄せられました。

講師 對馬 朱香 氏     ※青年海外協力隊とは・・・
(長野県立こども病院      JICA(Japan International Cooperation Agency)が
NICU勤務,助産師)       実施する海外ボランティア派遣制度

<上記講演会より抜粋>

ガーナの医療事情

 ガーナはアフリカの西部に位置する国です。
 気候は、南部は多湿で北部は乾燥しており、乾季が数ヶ月続いても井戸の水が枯れることはなく、水不足に陥ることはありません。通常は、井戸から汲んできた水を大きいバケツに入れて保存しておきますが、病院では電気で水を地下から汲み上げて、屋根の上にある大きいタンクに溜めて使用します。また、飲用水として、お店にはピュアウォーター(500mlの袋に水が入ったもの)というものが売られています。
 医療へのアクセスを妨げる要因として、ヒト(医療者の不足)、モノ(医療施設・物品の不足)、カネ(貧困のため医療費を捻出できない)が挙げられます。
 合計特殊出生率は、家族計画がしっかりしてきたこともあり、だいぶ下がってきていますが、「若くから出産・多産」という傾向があるため、お産の進行がとても速いです。例えば、家の中や病院に来る途中で赤ちゃんが生まれることがあります。

保健統計

 死因ですが、乳幼児では下痢やマラリア・先天性の疾患、妊産婦では分娩時の大量出血や妊娠高血圧腎症などで亡くなる人が多い印象です。

    合計特殊出生率と死因について
    ガーナと日本の比較     ▶

カンガルーケア

 このような状況のなか、現地の医療者たちは日々尽力しています。
 例えば、写真の赤ちゃんは体重1,000g程で生まれましたが、カンガルーケア等のケアを受け、すくすく育ちました。

ガーナの保健行政の仕組み

保健行政

 ガーナには、教育病院・州病院・郡病院・ヘルスセンターがあり、それぞれに役割があります。
 教育病院は南部に3つ、北部に1つあります。
 州病院は各州に1つあります。医師(特定の科の医師ではない一般医)、麻酔科医、看護師、助産師、検査技師等がおり、唯一帝王切開も可能です。画像検査(レントゲン等)もできますが、停電や故障等の事情により機能しないこともあります。
 郡病院の一部では帝王切開を行っています。
 ヘルスセンターには医師はおらず、PA(Physician Assistant フィジシャンアシスタント)という、外来一般を診る医師のようなスタッフがおり、簡易的な血液検査(マラリアやHIVの検査)が可能です。

ガーナの活動

CHPS(Community-based Health Planning and Service)の取り組み
 CHPSは、1977年にバングラディッシュで始まった取り組み(Community Health and Family Planning)をもとに作られました。
 コミュニティ・ヘルスオフィサー、コミュニティ・ヘルスナースと呼ばれる保健師に似た役割の方々、看護師、運転手、助手、ボランティア等のスタッフが活動しています。
 マラリアやHIVの検査を行う他、助産師がいれば分娩もできます。
 重要なのは地域の住民を巻き込む点です。コミュニティヘルスナースを中心に住民を巻き込んで、保健活動、教育、啓発活動を行います。また、基本的な保健サービスの提供(妊婦健診、産後検診、乳幼児健診、予防接種)なども行います。アクティビティプランというものを考えて、この週は妊婦健診を行う、この週は乳幼児健診を、スクールヘルス(学校で手洗い教育や性教育などの保健教育をする)を、家庭訪問を行う…等といった具合に活動します。
 CHPSは地域に根ざしたものなので、活動の拠点となる場所はコミュニティにある学校や近所の方の家の一部を貸していただいたりします。
 上記のような活動をメインに行う他、コミュニティヘルスナースが1件1件家をまわり、家が何件あるか、その家に何人住んでいるか聞いていく、といった活動もしていました。

妊婦健診
 
初回の妊婦健診ではマラリアとHIVの検査を必ず行います。また、マラリア予防のために蚊帳を渡したり、胎動を感じ始めるか16週を超えたあたりでマラリア予防薬を4週間毎に与薬します。マラリアに罹患することで貧血が進行することや、摂取する食物の栄養素に偏りがあり貧血になりやすいことが課題だったため、健診時は毎回鉄剤と葉酸を処方していました。この貧血について現地の助産師さんもそれを問題だと思っていたので、協力隊員が作成した教材を使って保健指導をしていました。
 私は、ガーナでは赤ちゃんの心音を聞くときにはトラウベを使っていたのですが、日本では機械音を通して赤ちゃんの心音を聴いており、ガーナで直に心音を聴いて、「小さないのちが確実にそこにある」と感動しました。また、現地の助産師さんは触診(レオポルド)に長けていて、妊娠25週くらいでも赤ちゃんの様子がよくわかるようでした。私が日本で働いているときは機械に頼っていることもあって、「ここまで診ていいんだな」と、学ばせてもらいました。

授乳の指導
 ガーナでは、外でもお母さんたちが授乳している姿を日常的に見かけます。病院で授乳の方法を習うということはほとんどなく、お母さんと一緒に住んでいるおばあさんやお姉さんがアドバイスすることもあるのですが、お母さんがうまく授乳できなかったり、赤ちゃんがうまく飲みとれなくて体重が増えなかったりといったトラブルが起こることがあるので、病院の壁にもともと貼ってある教材を使用することを提案したり、おっぱい模型を作り、視覚的に学べるようにしました。

乳幼児健診
 体重の増え方が緩慢だったり減ったりしていたら、上腕の太さを測って、緑→大丈夫 赤→高度医療機関に送る 黄→栄養補助食品を渡す 等といったことを行いました。他にも、予防接種を行なっており、BCG、ポリオ、B型肝炎など、ワクチンで予防できる病気の予防接種実施率は90%にものぼります。

男性の妊婦体験
 ガーナでは、男性の妊婦サポートや育児参加を促すことが重要視されていました。そこで、洋服の仕立屋さんに依頼して妊婦体験ジャケットを作成しました。男性はこれを装着した上で、立ったり座るなどの日常生活動作や、水を頭の上に乗せて運んだり掃除をするなどの女性がよくするお仕事を体験しました。妊婦体験をしてもらった男性とは「妊婦さんは腰が痛いのよね」といった話もしていました。現地の方の提案で、「若年の妊娠の予防にもなるから、学校でもやろう」という話になり、学校でも妊婦体験を行いました。

トラウベで聴診中

トラウベで聴診中

妊婦さんへの指導

貧血についての啓発

妊婦体験の様子

妊婦体験の様子

まとめ

◆とりあえずやってみる
 いろいろ考えてやってみると、より良いものになったり周りの人から良いアイデアを出してもらえたり、失敗から学ぶことが多くあります。だから、とりあえずやってみる。何がマッチするのか、それを突き詰めるまでやってみることが大切です。

◆いのちはいのち
 協力隊に所属している日本の人たちの中にも、「アフリカ系の人たちは赤ちゃんをたくさん産むから、赤ちゃんが亡くなっても気にしていないんじゃないか」と言っている人たちがいました。
 でも、ガーナのお母さんたちも日本のお母さんたちと同じように、赤ちゃんのことを一番最初に心配に思っています。早く生まれてそのまま亡くなってしまった赤ちゃんのお父さんも、人知れず木陰で泣いているのを見て、「どこに行っても、いのちに重いも軽いもなく、大事なものだ」と思い、これからも心のサポートになにかしら関わっていけたら、と思いました。

ガーナでの活動2

ガーナでの活動3

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