お知らせ

その他 国際交流セミナー「国内外における最新のCOVID-19対策の動向と見通し」を開催しました。

 2021年6月11日、現在世界で最も懸念されている健康問題であるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の典型的な特徴や国内外の感染対策についてご講演いただきました。

講 師

菖蒲川 由郷(しょうぶがわ ゆうごう)先生
●新潟大学大学院医歯学総合研究科 特任教授
●厚生労働省 新型コロナウイルス感染症 クラスター対策班 メンバー

<以下の記事の内容は、講演会より抜粋したものです>

新型コロナウイルス感染症の基本知識

◆典型的な経過
 約80%の人は軽症のまま治癒します。(無症状の人もいます。)
 約20%の人には咳や痰などの肺炎の症状が現れます。
 →20%のうち、人工呼吸器が必要になるほど重症化する人は5%。
 →さらに、5%のうちの3~5%の人は命にかかわる状態になることがあります。

典型的な経過

致命率

◆ただの風邪や肺炎ではない?
 大部分の人はただの風邪で終わりますが、一部は確実に重症化し、亡くなる人もいます。
 特に高齢者の致命率の高さが普通の風邪と全く違います。
 右のグラフは日本における第1波(2020年5月)、第2波(2020年8月)の致命率を示したものです。(青:0~69歳、オレンジ色:70歳以上)

◆感染経路
 多くは近距離の飛沫感染でうつります。
 飛沫感染の他には、エアロゾル感染(ウイルスが付着した小さな粒子が空気中を漂い、その空気をたくさん
吸い込むと感染する)、接触感染(ウイルスが付着した手で口元や目元に触れることで、ウイルスが体に入り込み感染する)があります。
 空気感染の可能性も指摘されてきています。

感染経路

新型コロナウイルス感染症の特徴

 新型コロナウイルス感染症では症状が始まる前からウイルスの量が増えるので、自分が発症しているとは知らないうちからうつしてしまうことがあります。
 また、ほとんどの感染者は人にうつさないため、感染連鎖が見えにくいのが特徴です。

グラフ

分布

Long COVID 後遺症の問題

 Long COVID(ロングコビット)とは、新型コロナウイルス感染症の後遺症のことで、重症度に関係なく起きます。
 重症化するのは高齢者の方が多いですが、若い人でも苦しむことがあります。
 主な症状は、疲労、息切れ、関節痛、胸痛、咳などで、元の生活が困難になる人もいます。

新型コロナウイルス感染症の後遺症

世界の戦略と日本の戦略

◆各国の戦略の内容
※一概に正しいと言える戦略はありません。国や地域の状況に合わせた対策が必要です。

日本 ●厳密な隔離はせず(重症者は入院、軽症者は自宅療養)
●3密回避
●クラスター対策を重視
●「後ろ向き」の積極的疫学調査を実施
 ※後ろ向き調査=感染者が誰から感染したかを遡って調べる。
 ※前向き調査 =感染者が誰に感染させたかを調べる。
中国 ●隔離病棟を増設
●大規模な検査の実施(1日35,000検体)
●厳格なロックダウンを実施
シンガポール ●強力なサーベイランス(感染症の発生状況を調査・集計し、予防に役立てる)
●アプリを使った接触追跡を実施
●国境検疫を強化・隔離
●学校・職場・商業施設を閉鎖
●800以上の診療所をネットワーク化し感染者は1カ所の病院で治療
韓国 ●ロックダウンは実施せず
●隔離と接触者追跡を実施
●感染者の接触者に対する積極的な検査を実施
●MERS(2015)で確立された体制
ニュージーランド ●厳格なロックダウンを実施
●接触者追跡と接触者の隔離
●徹底した検査を実施

◆日本のクラスター対策
 一般的な感染症の封じ込め対策では症例を探して隔離しますが、新型コロナウイルス感染症では5人に4人くらいは他人にうつさないので、感染者の周りを探しても次の感染者が見つからず、隔離する人を探し出せないことがあります。
 そこで、新型コロナウイルス感染症は拡大する際にクラスターを形成するという特徴に着目し、クラスターを防ぐことがウイルスの制御につながると考えました。

クラスター対策

◆ワクチン接種
日本は欧米に比べ開発・接種に遅れが生じています。

▶要因1 予算規模の違い
 ●欧米では2020年はじめから開発予算として数兆円規模をつぎ込んでいた。
 ●日本は当時100億円。

▶要因2 承認手続きの違い
 ●欧米では治験を簡略化している。
 ●日本では独自の治験を実施している。(他国で安全性が確認されたとしても、日本国内での安全性が確認されない限り使用できない)

▶要因3 日本のワクチン忌避体質
 ●ワクチンの効果や安全性、政策が信用できない
 ●いつでも病院にかかれるという安心感=危機感が低い
 ●いつでもどこでも打てる
  ・・・等の理由から「接種したくない」という気持ちに。

▶ワクチンへのマイナスイメージも要因の一つ
 ●MMRワクチンにより無菌性髄膜炎が発生(1990年代)
 ●日本脳炎ワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
 ●肺炎球菌ワクチンとHibワクチン同時接種後の死亡例
 ●HPVワクチン接種後の慢性疼痛
 ・・・などの副反応・有害事象により積極的接種推奨が(一時的に)中止された。

With Corona?

アンケート

◆今後の見通し
 2020年11月に実施されたアンケートでは、53%の人が「国民の行動変容とCOVID-19パンデミックは一進一退を続ける」と回答しました。
 2021年6月時点では数種類の変異株が出現し、より強力な対策が求められています。

  COVID-19と人間の調和のアンケートより→
 (2020.11.10現在)
  https://www.kk2.ne.jp/kk2/ezine?no=654

変異株

  変異株の一覧(2021.6現在)→

◆この危機を乗り越えるには…?
 (下表は人類がこれまで乗り越えてきた感染症の例)

日本では
6世紀半ばに流行
天然痘
世界で最初にワクチンが作られ、最初に根絶された
14世紀
ペスト(黒死病)
14世紀の世界的大流行では人口の20%が死亡
19世紀
コレラ
全大陸で数百万人が死亡
1918年
スペインかぜ
4000万人以上が死亡
1957年
アジアかぜ
200万人以上が死亡
1968年
香港かぜ
100万人以上が死亡
2009年
新型インフルエンザ
1万8449人以上が死亡
エドワード・ジェンナー

アーネスト・ボード(1877-1934)による油絵。
エドワード・ジェンナー(英)が
1796年にワクチンを開発した。
 

◆確実に乗り越える
 新型コロナウイルス感染症が今後どうなるかはわかりませんが、マスク着用、三密回避、手洗い、部屋の消毒等の対策を継続しつつ、
 ●ワクチン接種を受け、お互いにかからないようにする
 ●変異株への対応
 ●治療薬の開発
 ・・・等、今ある課題を着実に乗り越えることが重要だと思います。

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