大学案内

卒業式・修了式

平成30年3月13日に、平成29年度卒業式・修了式を挙行しました。
学部生96名、大学院生10名がそれぞれ新たな道への一歩を踏み出しました。
さらに、学部生2名に成績優秀賞を、「よさこいサークル」に長年の地域貢献を讃え、優秀課外活動賞を表彰しました。






学長告辞

 本日、新潟県立看護大学看護学部を卒業する96名の皆さん、大学院修士課程看護学研究科を修了する10名の皆さん卒業、修了おめでとうございます。
保護者の方々にも、心よりお祝いを申し上げます。また、ご多用のところご臨席くださいましたご来賓の方々に厚く御礼申し上げます。
今年は例年以上の大雪・積雪のなか、国家試験の受験勉強、修士論文の完成に夜遅くまで頑張っている皆さんの姿がありました。今、大きな課題を乗り越えて学部・大学院を修了し旅立とうとしている皆さんの顔は美しく輝いています。

 新たな未来に旅立っていく皆さんに、改めて「ケア」についてお話ししたいと思います。ケアという言葉は、広い意味では、世話、配慮、注意、手入れといった意味に用いられ、狭い意味では介護、看護ケア・英語ではNursing Careという意味に使われます。本日は広い意味でのケアについて、皆さんも授業等で学習したと思います、哲学者のミルトン・メイヤロフの「ケアの本質・生きることの意味」からの引用を先ずお伝えします。「一人の人格をケアするとは、最も深い意味で、その人が成長すること、自己実現することを助けることである。具体的な人のケアは、両親が子供を、教師が学生を、精神療法家がクライエントを、夫が妻を、さらにある意味においては、私たちはたくさんのものやことをケアすること―これらの間にいかに相違があろうと、それらはすべて共通のパターンを示していることを私は明らかにしたい。」続けて、「私たちは、例えば、新構想や、ある理想や、ある共同社会をケアすることがある。」と述べています。看護ケアにおいては、その対象は患者様やご家族、助産師であれば妊産婦やその子供、保健師であれば地域住民、地域社会をケアする専門職と言うことができるでしょう。

 そして、メイヤロフは、ケアの主な要素に、「知識」「リズムを変えること」「忍耐」「正直」「信頼」「謙遜」「希望」「勇気」の八つをあげています。いずれも深い意味があり、全部を紹介できませんが、このなかで「リズムを変えることが何で?」と、本を読み返したときに思いました。そして、その章を読み進むうち、若いときの看護体験を思い出しました。私は、看護学校を卒業後、外科病棟の看護師、大学院進学を経て、大学病院の神経内科病棟に配属され約一年間勤務しました。患者さんの中には神経難病から言葉で意思を伝えることができない方も多くいらして、そうした患者さんを始めて受けもった際に「ベッドを上げて、下げて」といった簡単な欲求すら受け止めることができないで、大きなコミュニケーション・ストレスを感じました。しばらくして、一人一人の欲求もキャッチできるようになりましたが、次に述べる患者さんとのやりとりが印象に残っております。
 中年の女性、筋萎縮性側索硬化症、運動ニューロンの障害で進行性に麻痺が全身に広がり、最後は呼吸筋麻痺により人工呼吸器に頼り命をつないでいく厳しい病気です。その方も、話をすることも口から食べることもできないで、経管栄養、人工呼吸に頼っていらっしゃいました。全身清拭のケアをした後には、ベッドを微妙な角度に高くして上半身の位置や呼吸器との接続を整えること、唾液を呑み込めないために常にティッシュペーパーを口に咥えるようにすることが必要でした。唯一の楽しみがイヤホーンでラジオを聴くこと、特に大相撲が大好きでした。この一連のケアにちょっとでも狂いがあると動かない体全体をよじって不満をあらわにされ、複数の患者を受け持ちながら彼女に時間をとられるとイライラしてしまうことがありました。その一方で、一連のケアが彼女の欲求に沿い、最後、イヤホーンを当てて差し上げ「今日のお相撲は・・・」と言葉をかけるとにっこりされ、そんなときは心の通い合いを感じることができました。そうしたやりとりを振り返り思ったことは、自分は患者さんの訴えにじっくり耳を傾けられる看護師と思っていたけれど、結構、患者さんに自身のペースや欲求を押し付けていたことに気づきました。それでも、心にゆとりがあれば、患者さんのペースに合わせて心を通わせることができる。「ゆとりをもってケアにあたろう」と振り返りました。メイヤロフは次の様に述べています「単に習慣に従ってケアすることはできない。私は自分の過去の経験から学びとらねばならない。私の行動がもたらす結果が何であるか、私の援助は成功したのかどうかを考え、さらに結果に照らして、私がよりよく他者を援助するため、自分の行動をそのまま続けたり、正さなければならない。」と、本を読み返して「リズムを変える」とはこの振り返りのプロセスのことだと理解しました。

 皆さん卒業後は職場に適応するのに精一杯で、振り返り返る余裕すらない時期があるかもしれません。しかし、心のゆとりは、ことにあたり一歩先んじて努力・準備すると自ずと生まれます。仕事を離れてリフレッシュすることも大切です。そして、気になった看護場面を振り返ってみてください。同僚と振り返ることもあるでしょう。経験から学びとること、そのことが皆さんの成長につながると信じています。

 大学院修了生には、次の一節を紹介します。「ある種類の異なったリズムを考えてみよう―これはケアにおいて重要なものであり、より狭い枠組みとより広い枠組みの間をいったり来たりする行動のリズムである」。皆さんは大学院に入学するとき臨床経験から「これはどうなっているのだろうか」「これでよいのだろうか」などいくつかの疑問をもって入学されました。大学院の授業では、看護の世界を理解するのに理論や実践のアプローチを学び、それらに触発されて臨床の疑問をリサーチクエスチョンに変えて、一連の研究プロセスを経て、その答えを修士論文にまとめました。研究のプロセスは苦しかったでしょうが、思索を巡らせ、新しいものやことを発見したり創ったり、検証したり、それを言葉にできたとき、達成感と伴にこれまでの疑問が解けて目の前が開けた感じがしませんでしたか?そして次にまた新たな課題が見えてきたことでしょう。研究から得た知見は研究のための研究に終わらせることなく、看護実践に何等かの形で還元して欲しい、さらなる研究へ繋げて欲しいと強く願っています。

 新潟県立看護大学で学んだ四年間、大学院の二年あるいは三年間は、人生の通過点ではありますが、後に各位の成長につながったと思っていただければ、一人の看護教員として幸いです。最後に、ケアの要素である「勇気」「希望」について、「勇気があれば希望が生まれ、希望があれば勇気が湧いてくる」というメイヤロフの言葉をもって、はなむけといたします。

平成30年3月13日

新潟県立看護大学
学長 小泉 美佐子

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