令和5年4月6日、令和5年度入学式を挙行しました。
看護学部93名、大学院看護学研究科博士前期課程1名が神田新学長より入学許可され、
新潟県立看護大学での第一歩を踏み出しました。
新入生の皆さんの表情からは、新たな生活へ期待を寄せる様子がうかがえました。
全体の様子
学長告辞
入学生宣誓
在学生歓迎の辞
教員紹介
記念撮影
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今年度は看護学部看護学科に93名、大学院看護学研究科博士前期課程に1名が入学されました。入学式に合わせたように高田城址公園の桜が満開となり皆さんをお迎えしております。新型コロナウイルス感染症の拡大が懸念された中、困難を乗り越えての晴れの入学式に保護者の方々もさぞかしお喜びのことと存じます。
本学は2002年4月に開学し20年を超える歴史をもつ単科の看護大学です。2006年に大学院看護学研究科修士課程を開設し、2018年から修士課程に続く博士後期課程を開設しました。卒業生は学部1,683名、博士前期課程修了生124名、博士後期課程修了生2名に及び、新潟県内はもとより全国で看護師・保健師・助産師・研究者として活躍しています。
新型コロナウイルス感染者が2020年1月、日本ではじめて発表され、未だ収束をみせない状況にあります。看護学部に入学した多くの人は高校の3年間は緊急事態宣言の発令、休校、そして楽しみにしていた部活動や修学旅行も十分に経験ができなかったことでしょう。当たり前と思っていた日常が、貴重な時であったと思う瞬間でした。そのような中、看護学部の受験を突破した皆様の努力を大変頼もしく受け止めております。数ある大学から、新潟県立看護大学を選択し、縁があって学びをともにできることを教職員一同大変歓迎しております。
入学生の皆さんが志す看護職は高齢化の進行、新型コロナウイルス感染症との戦いの最前線で献身的に働く看護師や保健師等、看護の力、価値を社会が再認識する機会になったこともあり、需要は年々高まる一方です。
国は「病院中心の医療から地域全体でみていく医療へ」と医療のパラダイム転換を謳い、地域の特性にあった、保健・医療・介護の地域包括ケアシステムを整えているところです。
本学の建学の精神「ゆうゆう・くらしづくり」は地域包括ケアを象徴している精神です。まさに、健康づくりから、病気の予防・診断・治療、リハビリテーション、看取りのケアまで、そして新生児から高齢者まで、地域の人々のくらしを支え、地域とともに邁進する大学として本学は存在します。
病になったとき、人は不安と心配でいつもの自分ではない体験をします。看護師の「大丈夫、一緒に考えましょう」の言葉にどれほど救われることでしょう。人々の一番身近な医療者として「治し支える医療」になくてはならないのが看護の専門職です。皆さんが将来、看護職として対象者と向き合うためには、確かな知識と技術を身につける必要があります。
大学では、今から4年後の卒業時に身につけておく能力をディプロマポリシー(学位授与の方針)として7項目を設定していますが、整ったカリキュラムのもと段階をおって皆さんの4年間の学修を支援していきます。
看護の学修では、ヒトの身体機能を知る解剖や生理学、病気の原因や治療を知る病態学や治療学などはとても大切です。それと同じように、看護は人の反応を適切に把握し、アプローチしていきます。そのため人がどのような反応を示すか、どんな考えや価値観を持っているのか、どうしてこの判断をするのか、などを追求している哲学、心理学、行動科学、教育学、社会学、倫理学など、人間を理解する幅広い学問を知り、看護を追究していくこともまた求められています。
また看護の特徴の一つとしては、対象者である人、患者さんやご家族を全体として捉え関わることです。自然科学の学問、例えば生理学や医学では、専門性を重視するために要素を分解し、アプローチします。看護学は人間を全体、包括的にとらえアプローチしていきます。
皆さんは、学修過程で時として、割り切れない曖昧さに疑問を持つこともあるでしょう。大事なのは、皆さんの自由な発想や創造性を生かし、「看護の専門性とは何か」を探求し続ける、継続性と問題解決をしていくチャレンジ精神です。
「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」のアニメーションを手がけた宮崎駿(はやお)監督は、「才能とは情熱を持続させる能力のこと」と述べています。好きで情熱を注ぎこめることを探し、継続できることで「天才」が生まれるのです。
さて、国際情勢に目をむけますと2022年2月24日に開始されたロシアのウクライナ軍事侵攻により今なお多くの命が脅かされ人道上の危機が続いています。こうした戦時下や、国内外で頻発する災害などでも看護職は活動支援をしています。そのとき人々の生きる権利、尊厳を保持すること、平等な看護を受ける権利など人権を尊重することも求められます。
これらの支援の基盤には、コミュニケーション能力が求められます。保健・医療・福祉のどの分野におきましても多職種(チーム)で仕事をします。同僚とのコミュニケーションはもとより、医師・薬剤師・介護士など他の専門職とのコミュニケーションそして対象者となる人々と関係性を築き、よりよい看護ケアをするのにも高いコミュニケーションが必要です。ぜひ、4年間でその技術を磨くことを期待しております。
大学院入学生は、コロナの影響下にあっても自己の課題と向き合い解決すべく大学院の扉を叩き入学されたことと推察します。2021年3月26日に閣議決定された 第6期科学技術・イノベーション基本計画では、我が国が目指す社会の一つに、一人一人の多様な幸せ(Well-being)が実現できる社会が謳(うた)われました。人生100年時代を迎えて、何回でも学び直しの機会があり、それをまた仕事に生かしキャリア・アップを図る時代となっています。日本では働きながら大学院に修学することの理解は、国際比較において未だ低いというデータがあります。大学院教育は基礎教育に比較して求められるレベルが異なり、研究の取り組みでの課題を見出すことからして大変です。仕事を続けながらの修学、研究の向き合いに、くじけそうになることが起こるかもしれません。しかし、学位論文を仕上げ論文審査に合格になったときの喜びはひとしおです。その日に向けて計画的に頑張っていただきたいと思います。
最後になりますが、看護は生涯を通じた学びを必要とし、人を対象とする幅広い学修と様々な人々との出会いを通して自身の成長を育むことができる専門職です。入学式というのは、新しい出発をするための儀式でもあります。今までの学校や環境から離れ、新しい学びや出会いがある環境に身を置くことで、皆さんが成長することが期待されています。しかしながら、新しいことに挑戦することは、不安や心配がつきものです。そんなときは、周りの人たちに助けてもらい、学生同士一緒に支え合いながら、新しい環境に馴染んでいってほしいと思います。本学を生涯学習の起点において、学び続ける姿勢を培うことを願い、教職員はそれを一丸となって応援していきます。大学がある上越市は江戸時代城下町として栄えた歴史と文化に富んだまちです。この地の歴史と文化、自然を味わい、地域の人々と交流し、より充実した大学生活を楽しまれることを願い、告辞とさせて頂きます。
令和5年4月6日
新潟県立看護大学長
神田 清子