看護学研究科
博士後期課程 精神看護学 修了 安達 寛人
私は看護大学の教員であるため、今後も教員として勤めていくのであれば、看護学教育に精通した深い知識や技術、態度、研究能力を身につける必要があると思いました。その自己研鑽の手段として博士後期課程への進学を考えたことがきっかけです。進学にあたり、ご指導いただきたい先生方がいらっしゃったことに加え、費用面や自身の生活の維持ができる見通しがあることなどの条件がそろっていたと判断できたことから、最終的に進学を決断しました。
授業課題やプレゼンテーション資料の作成、研究のためのまとまった時間の確保がどうしても必要でした。特に、研究に関しては取り組まないと進まないため、習慣的に継続して研究に取り組んでいくことが大変だったと感じています。平日は日中の業務が終わった後に可能な限り毎日大学院の課題や研究に触れるよう意識して取り組んだこと、また、毎週土曜日は妻の協力も得て課題や研究のための時間として捻出したことなどを工夫しました。
テーマは、「うつ病をもつ人における自殺再企図の経験」です。自殺企図を繰り返す人々はどのような状況にあってどのような感情を抱えているのか、当事者の視点から明らかにすることで自殺予防支援のための示唆を得たいと考えました。当事者は、それぞれの苦悩を抱え込み、精神的に追い込まれた結果として自殺を試みていました。しかし、生きたい気持ちもあり、結果的に未遂に終わります。当事者は、根本的な問題が解決されないことで再び苦悩を抱えていき、再び自殺に追い込まれていました。
大学院を修了したことで得られた学びとしては、少し抽象的かもしれませんが、自殺に関する問題がどのような状況になっているのか、また、自分には何が分かっていないのか、そしてこれから何をすべきか、ということについて及ばずながら分かったことです。国内外の文献の検討や研修などを通して広く自殺関連施策の現状について把握できましたし、データ収集・分析を通して当事者の生々しい苦悩を感じられたことが対象理解につながる貴重な学びであったと感じています。
うつ病をもつ人から自殺企図を繰り返した経験について直接お話を聞けたことは貴重であり、自殺再企図の予防、ひいては自殺予防全般の支援に寄与できると考えています。今後は、得られた知見をもとに、自殺ハイリスク者に対する効果的な相談支援のあり方について検討していくことや、地域の自殺予防支援に取り組んでいきたいと考えています。
(2023年7月)